台湾1200 ~無限アップダウン、あるいは台湾ランドヌールたちとの出会い~ 白 川 克 |
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ブルベで厳しい状況に陥ると、決まって家に残してきた奥さんと娘のことを考える。家族3人で過ごす穏やかな休日を。 |
スタート地点すぐ近くの屏東のホテルに着き、自転車を組み立てるともう夜なので、その辺でご飯。お店では英語は全く通じないが、メニューは漢字だからなんとなく想像できる。現物を指さしてもいいし。台湾のご飯はなんでも上手い。豚足や臓物を醤油味で煮込んだものが名物らしい。
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参加ガイドを読んで参ったな、と思っていたのが夜スタートなこと。恐らく南部の暑い地域を夜のうちに通過して欲しい、という意図なのだろう。(または、PBPをかなり意識したコース設計なので、そのあたりも真似をしたのかな?)
日が陰った頃に、スタート地点の大鵬大橋に向かう。ちょうど別のホテルに泊まっていた吉田さん、北山さんと一緒になり、日本代表チームが無事集合。
スタート直前には、台湾で最初の1200㎞の開催という気合が感じられる、華やかなブリーフィング。
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蒸し暑い夜道をかっ飛んでいく台湾人たち
大鵬湾をぐるりと巡る、周回道路を集団走行。大きな湾(というか湖)なので、1周10㎞ほどあるのだが、ド平坦で信号も車通りもほとんどない。日本にあったらタイムトライアルのメッカになるだろう。 スタート地点は変更されたけど、ちゃんと当初のスタート地点、大鵬大橋は渡るようだ。これで本来のコースに復帰して一安心。いきなりサイコンの距離は4㎞ずれたけど。 橋を渡った時点で、日本人チームは早くも最後尾。なんだかペースがやけに速い。僕ら以外は全員、時速30㎞オーバー。「1200走るペースじゃないよね」「あいつら、すぐにやられるパターンだな」と話しながら、マイペースで進む。 台湾の国道はとても走りやすい。信号も少ないし、道幅が広い上に2輪車用のレーンも完備されている。ちょっと蒸し暑いので、水を頭にかけながら走る。夜中でこの調子だと、昼が恐ろしい。
スタートから100㎞ほど南下して、最南端をぐるりと周回してくるルート。昼間通ったら景色が良さそう、と思いながらほとんど何も見えない。それもまたブルベ。 |
朝になり、穏やかな南国の道を行く
「あいつら、ブルベの走り方知らないんじゃないの?」とオーバーペースを心配していた台湾ランドヌール達は、200㎞走っても、いっこうにバテる様子を見せない。相変わらず最後尾。
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素晴らしい風景の台湾3号線 PC5の辺りから、これから台北までの往復で700㎞くらい付き合う、3号線に合流する。3号は名前の通り台湾の主要国道のはずなのだが、日本の一桁国道をイメージしていると愕然とする。平野部の主要都市を結んで南北に走っている1号線とは異なり、少し山よりを通っているからだ。中央山脈近くの地形の凹凸を全て無視して強引に南北に通してある。
そして2つ目の峠、標高921m。峠が集落になっていて、小学校もあるようだ。道の周りを見ると、梨の様な涼しいところでとれる果物を栽培するために人が結構住んでいるらしい。この峠は、前菜のアップダウンで脚が削られているので相当苦労した。何より厳しいのは、2.5日後にもう一度来るという現実。 |
台湾人3人組に混ぜてもらう 古坑の宿泊所を出ると、外は雨だった。台湾は暑い島なので、多少の雨は歓迎なのかもしれない。
峠を下ってしばらくすると、夜明け。朝もやが甘ったるい匂いに満ちている。よく見れば、道の両側はずーっといちご畑。ちょうどシーズンらしい。あとで聞けば大湖といういちごの名産地で、シーズン中は台北にも大湖産いちごの販売車が来るらしい。
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ここでちょっと一休みして、今後台湾ブルベを走る方の参考に、台湾のコンビニについて触れておこう。
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タイムトライアル、そして終った僕の旅 ようやく600㎞を超えた。ここからは、僕にとっての最長不倒距離。そして待ち望んでいた、時間制限緩和だ。
この後、折り返しまでの間もかなり辛かった。2回もタイムトライアルしたにも関わらず脚は良く動くのだが、何しろスタートした23日の朝から2日半で、1時間しか寝ていない。 ブルベで睡眠不足のまま走って落車する人もいるが、幸い僕は経験がない。その代わりプチ幻覚というか、とにかくあらゆるものが人に見えるようになる。「あー、道端に農作業の格好をしたおばさんが座り込んでいるなぁ」と思ったら、ゴミ袋だったり。なんでもかんでも人間や犬や馬に見立ててしまう。脳みそがへたっている割に、凄い想像力だ。 |
折り返しで借金6時間を背負う 折り返し718kmに着くと、クローズ時刻を1時間以上オーバーしてるのに、台湾人参加者も結構いる。大丈夫なのかな?主催者やサポートする人々も多く、ごった返している。 |
時速15㎞のライバルと死闘。そして憎き3号線
アップダウンのせいで時間を稼げない以上、PCにいる時間を10分以内にしないと駄目だ。コンビニでカップラーメンは身に余る贅沢。走りながら全ての補給を済ませるしかない。
そしてついに、945㎞地点にある4つ目の峠(855m)を、時速15㎞のライバルよりも、どうやら先に越える事ができた。しかも台湾人最後尾の人に追いつくことができた。久しぶりの同行者だ。 |
終わらない夜の峠、何度目かの誤算、突然の中断 峠の直前の有人チェックポイントまで、50㎞をとてもスムーズに走れた。徐々に高度を上げ、高原の風景になっていく。ここまで1000㎞走ってきたが、実は今が1番走れている気がする。前々からスロースターターだとは思っていたが、まさか1000㎞になって好調とは。こんな能力、ブルベでしか活かせないな。
有人チェックポイントにはスタッフの他、参加者も10人くらいいて、土砂降りになってきた雨を避けるように休憩していた。汁ビーフンやバナナをいただく。この後峠を下ってからも、コンビニは60㎞先までないのだから。
夜が明けてみると、結局20人以上のランドヌールが農家の軒先を借りて休んでいた。ちゃんとしたレインウエアーを持ってない人も多く、これでは低体温症に近い人もいたことだろう。そういう意味での救済措置でもあったのかもしれない。 |
ゴールはどこだ?翻弄され続ける 最終PCについたのが、確か11時半ごろ。下り基調だと思っていたけど、蓋を開けてみるとやっぱりタップリとしたアップダウンだった。あのまま救済措置がなければ厳しかっただろう。 |
大鵬湾に戻る ゴールのコンビニで1人になってしばし唖然とし、市内でゆっくりとご飯を食べる。ビーフンとスープと肉の煮込みを指さし注文。
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台湾は距離的にも文化的にも日本に近く、初めての海外遠征先としては参加しやすいと思います。それでいて、海外ブルベならではの大冒険を経験することができますので(これは僕の脚力がギリギリだったせいですが)、本当におすすめです。
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Report & Photo MASARU Shirakawa 2013
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