SR600
DE L'OURS CATHARE

丘の上に見つけた小さなB&B

高台の上から見下ろしたフォアの街並み
フォア城が見える

L'OURS
CATHARE

SR600 L'OURS CATHAREのスタートはフランス南部はミディ・ピレネー地方、フォアという町です。フランスで5番目ぐらいに大きな街トゥールーズから約70キロほど南へ行ったところにその町はあります。フォアの町のには立派なお城があり、町のどこからでもその城を見上げることができます。私達がその町を訪れた7月の終わりから8月ごろ、ちょうどフランスの人たちはバカンスのシーズンでした。その町にはホテルが2件ほどあったようですが、6月の終わり頃ですでにホテルは満室でした。ホテルはもっと早くに予約しておくべきでしたが、ラッキーなことにその町のすこしはずれたところに素敵なB&Bを見つけそこに泊まることができました。

行き方

関西空港からパリまではやはりエールフランスの直行便が便利です。トゥールーズは大きな街なので、パリからの国内線も便数は比較的多く融通がききます。今回は関西空港からトゥールーズまでその日のうちに移動して、トゥールーズで一泊することにしました。パリには17:00ごろについて、国内線には18:30ごろに乗り継ぎというギリギリのスケジュールでした。普通にいけばトゥールーズには21:00、まだ明るいうちに到着するはずでした。
ところが、やはりというか事はうまくはいきませんでした。パリの到着が40分ほど遅れたのです。とにかく入国手続へと急ぎました、めちゃくちゃ並ぶんでは?と思いましたが、これは知らなかったのですが、パリで国内線乗り継ぎの場合は乗り継ぎ専用の入国手続カウンタがあるのです。なのでものの2分ほどで入国審査は完了しました。そこでホッとしたのがいけませんでした。搭乗ゲートまで急いで行けばいいものを、ゆっくり行ったころには国内線の飛行機はもうゲートから離れた後だったのです。10分ほどの差でした。
自転車は先にトゥールーズへ行ってしまったのでしょうか?係の人に聞けば、それは絶対にないようです。安全上の意味もあって乗ってない人の物を運ぶことはないようです。トゥールーズへの国内線はまだ後の便があるので、係の人に手配をしてもらうようにお願いしました。一応国際線が大幅に遅れたことになっており、話はそんなに難しくはありませんでした。無事次の便を手配できましたが、次の便までは2時間ほどの待ち時間がありました。

トゥールーズ

トゥールーズの空港に着いたのは結局23時ごろで、空はすっかり暗くなっていました。とにかくホテルに行って休みたいのですが、トラブルはまだ続きます。自転車が待てども待てども出てこないのです。荷物カウンターの周りにほとんど誰もいなくなってしまったので、いよいよ係のいるカウンターに相談に。発音のわかりにくい英語をなんとか聞き取ったところ、荷物はまだパリにあるということ、明日のいつこっちに来るかはわからない。しかたないので、その日はとりあえずホテルへと向かったのでした。ホテルに着いたのはもう1時前でした。

SR600が終わってから、
改めて自転車と乗ってみた

自転車

次の日、空港の荷物カウンターに電話しますが全く誰も出ません。拉致があかないので空港まで出向きます。幸いホテルから空港までは10分ぐらいです。昨日話した人とは別の人でいろいろと相談した結果、なんとエールフランスが直々にフォアのB&Bまで自転車を直送してくれるという話になりました。そんなわけで、私達は自転車のないままスタートの町フォアへと行くことになったのです。

電車

トゥールーズからフォアまでは電車で行きます。トゥールーズでは利便性を考えて駅前のホテルに泊まっていました。道路を渡って目の前が駅でした。電車のチケットは事前に日本でネット予約していました。チケットは乗る前に乗車駅で打刻をしてもらう必要があるようです。これを怠ると罰金になる場合があるとか、旅行者にとってはすごい脅しです。とにかくカウンターで打刻をお願いして打刻をしてもらったのですが、後でわかったのは、駅の乗り口にある小さな黄色の機械にチケットを挿入すれば打刻されるようです。
ホームで待っていると、自転車をそのまま載せれるタイプの電車がやってきました。私達の自転車がないのは残念です。フォアに行くまでに何人かの自転車乗りが電車に乗ってきました。そのうちの一人は反射ベストにライトも完全装備の自転車でした。しかしブルベのことは知らないと言っていました。その人はこのあたりのことを色々と説明してくれました。普段はすぐ向こうの方にミディ・ピレネーの山脈が見えること。でも、ここ数日は少し天気が悪く、気温も随分低いということ。確かに空は少しどんよりとしていました。

フォア

フォアの町に近づくと、大きな城が見えたのですぐそこがフォアだとわかりました。駅にはタクシーが一台いましたが、あえなく乗車拒否されてしまいました。B&Bの詳しい位置はよくわかりませんが、2キロぐらいの道のりを私達は歩くことにしました。しかしこれが失敗で、そのB&Bはかなり坂の上にあったのです。やっとのことでたどりついたころには、もうへとへとでした。
そのB&Bはフォアの町を見下ろせる高台にありました。石壁の土台に木造でできた家で日本にはない感じの素敵なところでした。階段を登り降りするたびにギーギーと音がします。気温はとても低くて夏なのにエアコンは全然いらない感じです。普段はまだもう少し暖かいらししですが、ここ数日かなり気温が低いようで18度ぐらいしかありません。去年走ったプロバンスは連日30度を超える暑さでした。私達はそれに近いものを想像していましたが、これはかなり計算違いでした。
幸い、フォアの町から8キロほど北に行ったところに大きなスポーツ用品店がありました。B&Bの人に聞くとかなり自転車のパーツ類も充実しているとのことで、寒さ対策用の追加装備を探しにいきました。実際、走りだすと想像以上に寒く、ここで買ったジャージやインナーがなければ走れていなかったと思います。

雨の中スタート    

SR600

私達は午前3時、土砂降りの中スタートしました。最初はゆるやかな登りが続く。標高が高くなるにつれ霧が出てきて視界がとても悪くなりました。下り区間も霧は晴れません。道路の端がわからないような細い道なので慎重に下りとても時間がかかりました。明るくなると、周りが牧草地帯であったことがわかります。道路の側で牛が草を食んでいるのが見えます。今回のコースはこんな牧草地帯が延々と続くコースでした。
その後もアップダウンが続きます。山を降りてくるとフランスの小さな村があります。しかし今回は前のプロバンスのように飲み水に使えそうな噴水が見当たりません。なのでスーパーを見つけると水を買うようにしました。

最初のPC
なかなか雨は止まない

牧草地帯に出ると牛がいた

山を降りてくると小さな村がある

お昼ごろ、だいぶ晴れてきた

お昼には雨が止みました。前半のPC付近はツールドフランスにも使われた道らしく、地面は選手の名前などペイントでいっぱいです。山を降りてきた村にもツールドフランスの垂れ幕がかかったままになっていました。コース上には何箇所か比較的大きな町があります。レストランもありますが、レストランはお昼ご飯時か夕方5時を過ぎないと開いていないことが多いです。

1日目の夕方山を下ってくると、まだ少し空は曇っていましたが、山に反射した夕日がとても綺麗でした。

夜になるとまた雨が降ってきて気温がグッとさがります。山を降りてきて町があっても、もうすっかり静まり返っています。ただ岩場の上に建ったお城がライトアップされていて、とても幻想的でした。

道はペイントだらけ

この村はツールドフランスのコースだったみたい

牛と対決?!

ほんの少しだけ夕日が射した

真夜中のPC。少し雨が降ってきた。

平均斜度はだいたい9%以上  

今回のコースは道に番号が振られていない市道がたくさん出てきます。びっくりするぐらいデコボコだったり、細かったり、未舗装だったり、夜中だとこれで道は合っているのだろうかと思います。こんな暗い市道でも暗闇からは牛の首に着いたカウベルの音が聞こえます。なんとなく今回のコースは牧場があるところを通るはずなので、この道で合っていると思い進むとびっくりするような激坂に遭遇したり、いよいよ引き返したほうがいいかと思ったところで、なんとか広い道に出たりしました。

ミディ・ピレネーの道には登りに差し掛かかったところに、これからどれぐらい登るのかの情報(標高差、平均斜度、最大斜度)が書かれた看板があります。そして平均斜度は9%ぐらいの峠が多かったです。

レストランの後
断崖絶壁の横を走る

330kmを超えた辺りからがこのコースの難所です。2000mを超える峠もあります。その登りに差し掛かる少し前に小さな町がありました。そこには小さなレストランがありました。レストランはオープン前でしたが、私達が困っていたらそこのシェフが特別にチキンサラダとオムレツを作ってくれました。本当に美味しくて何より力が湧いてきました。シェフにこれから行く場所を見せると、とても驚いていました。

レストランでしっかり食べたおかげで二人共この難所区間を調子よく登ることができました。大きな峠が3つあります。どの山も牧草地帯で、特に下り道、牛糞でひどい有様でした。マンホールぐらいの直径のそれは、とても避けれたものではありません。

こんなに下らなくてもいいのにと思う下りを下りきると、すぐに次のきつい登りが始まりました。同じ道を登っていく車がかなり先の方まで見えます。あの辺りが頂上かと思うところより先に車はどんどん登っていきます。
2001m。ついにこのコースで一番標高の高い所に来ました。気温はかなり低く1桁台だったと思います。あまりに寒いので、私達はその頂上にあった使われてない馬小屋の中で服を着替え防寒に備えました。
再び道は下ります。牧草地帯を走るつづら折れの道が下の方まで続いているのが見えました。

難関の峠その1。

登りが続く、食べておいてよかった。

峠その2。後ろの建物は馬小屋?

つづら折れ 下った分だけ また登り!

峠その3。なんとか明るいうちに着いた!

まだあとひとつ難関が残っているというのに、道は再び1000m近くまで下ります。時間はその時5時前後でした。そしてなんとか頑張って、明るいうちにあとひとつ最後の難関を登ることができました。
頂上に着いたのは午後8時過ぎでした。あと1時間もすれば暗くなるので下りを急ぎます。その道は今までと違い、見たこともないような断崖絶壁の下りで、明るいうちにここまで辿りつけて心底良かったと思いました。道の端は少し石が積まれている程度で、誤ってコースアウトしたらひとたまりもありません。段々と暗くなってきますが、ぎりぎりライトを付けるぐらいの時間に下まで降りることができました。

残りのコースは170km。もう1000mを超えるような峠もありません。比較的緩いアップダウンが続きます。ただ一ヶ所最後の市道。やぎ農場を続く道を除いて。それと、最後の方は、町というか村ばかりを通りますが、スーパーなどの店は道沿いにはほとんどありません。そして最後快適な下りを疾走すると、フォアまではあっという間に着いたのでした。

ゴールまでの最後の区間。眼下に川が流れる。

ヤギ農場

フォア。ついにゴール。

おわりに

SR600の魅力にはまってしまった私たちは、昨年に引き続き、今年もフランスを走ってきました。SR600は自分達の決めた日程と時間で走ることができるので参加しやすいです。ピレネー山脈を走りたくてこのコースを選びました。市道や脇道、ツールドフランスのコースが多く、小さな村ばかりを通り抜けていきます。農道が多く、車の通りは少ないので自転車は快適です。ゴール手前のヤギ農場は18%ぐらいの坂がありました。
このSR600は山岳を楽しむために作られたコースだと思いました。下るために登る、登るために下るの繰り返し、距離を稼ぐためだけの無駄なルートは走らない山岳600kmです。景色を楽めたというよりも、このコースそのものを楽しめたと思います。いくつもの山を越えて走るきびしさと満足感がいっぱいになるコースでした。
素敵なSR600を作ってくれたソフィさんに感謝します。

>Cue002.pdf
※フィアル内の獲得標高は計算が間違っています。正しくは12700mです。