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▲アラスカの大地と今泉さん |
オーロラを追って1200km---------パンクとバースト合計9回 2011年、PBPと同じ日に開催されたザ・ビッグ・ワイルド・アラスカ1200km グランド・ランドナー。アラスカの壮大な大自然の中、1200kmブルベを旅した今泉さんのレポートです。 |
BWRはとても小規模な大会で、全部で40名ほどしか参加者を募集していませんでした。主催のKevinさんに確認したところ、参加者リストの全員が来るわけではないので大丈夫。むしろ友達を誘って来てね!との返事をいただきました。
ところがBWRの参加条件として、SRの取得が必要だったのです。結局PBP参加者の邪魔をする形になるのを心配しつつ、申し込み制限のない名古屋などの開催でのSR取得を目指します。 順調に思えた3月、あの大震災です。ブルベどころではないのではないかという悲壮感がありました。また震災の影響は業務にも反映し、一時的に仕事量が大幅増加したりしました。 そんな中でも各地の主催者の尽力によりブルベは続行され、僕もSRを得ることに成功しました。結局日本人参加者は僕だけになってしまいましたが、ここはぜひとも参加してレポートするのが役割というものでしょう。 ▲参加申込と送金方法SRの資格を示す認定番号を記載し、権利放棄書にサインしたものをKevinさんに郵送します。アメリカに郵送するのは初めてでしたが、あんなに安くて手軽とは知りませんでした。 そして送金は、なんとPayPalのアカウントを開設していただいたため、非常にスムーズに終了しました。 ▲旅行計画アンカレッジは世界のハブ空港、いろんな路線が出ています! というのが触れ込みの一つでした。調べてみると日本から直線距離が5000kmほどしかなく、多少値が張るものの直行便なら6時間で到着するとのこと。体力的にも休暇取得的にもラクなので、多少高くてもこれしかない! と思いましたが、チャーター便の値段は40万円〜。いやいやいやいや。仕方なく一番安いのを探しましたが、日程変更不可であっても往復25万円のものしか見つけられませんでした。アラスカは観光トップシーズンのため、やむをえないようです。ホテルはダウンタウンのビジネスホテルにしましたが、これがまた高い! 5泊で$1000とは、円高でなければありえないスケールです。残りはPCで寝ることが確定しました。 ▲キューシート直前まで暫定版のキューシートしかありませんでした。それはPCしか書かれておらず、右左折のポイント記載がないのです。2週間ほど前になり確定版を見ると、やはりほとんど変わっていません。 まさか、最初に曲がるのが1080km地点だとか、そんなバカな。ははは。 しかしそれはほとんど事実だということに後で気づくことになるわけです。 |
今回はデルタ航空のため荷物を2つ預けることができます。ただし自転車は別途$150と高額を当日請求されますが、やむを得ません。 チェックインしてフライトを待つ段階で、さっそくイベントが発生しました。 「このフライトはオーバーブッキングされています。もしご希望でしたらポートランドでなくマイアミ経由にさせていただきます。予定より1時間早く到着できますがいかがでしょうか」 いやいや、僕は1年ぶりの英語なんですよ。旅先でのトラブルは少しでも避けたいからポートランド空港の乗り換え図まで印刷してきたのに。 ▲断りました。 「いや当初の計画通りポートランド経由でお願いします」 ▲ですよね ・気流の影響により機体の到着が遅れております ということでマイアミのイミグレーションに並ぶ頃には、乗り継ぎ予定の飛行機は出発していました。やっぱりねーと思うと同時に、困ったなぁ。カウンターを探して事情を説明し、チケットを更新するのか。もちろん英語で。いやその前に、乗り継ぎ便は先に自転車を受け渡す必要があるのですが、僕の会話力では違う飛行機に乗せられかねません。 乗り継ぎ便用チェックインカウンターに行き、さてどうしたものかと思っていると名前を呼ばれました。「申し訳ありません、1時間後のフライトに振り替えさせていただきました」 かくして自分で交渉することなしに、無事にアラスカ航空に乗り継ぎ、キルト地の貼られた小ぶりの飛行機の中で落ち着くことができました。 でもシアトルでは搭乗ゲートに行くために地下鉄を3本も乗り換えるんですよ。旅慣れていないと乗り遅れてしまう危険があると思います。 |
2日目の観光日に何をするか。考えた結果、アラスカ動物園を見に行くことにしました。アラスカは熊が出るので熊よけスプレーを常備せよと主催者からの注意があったので、まずは実物を見に行くことにしたわけです。
平日の動物園というのは非常に空いていて、子供連れの家族と老人がちらほら。なんだか場違いな気がしましたが、しっかりと熊コーナーを見に行きます。 ブラックベアに、グリズリー。「熊に会った日が最悪の日にならないように」という説明書きがあります。ちょっと見入ってしまいました。正直あれと出くわしたら、もう祈るしかありません。 引き返してアウトドアショップに行き、寝袋のインナーと熊よけスプレーを買います。店員の説明によると、ルートがすべて国道ならまず熊に出会うことはないでしょうとのこと。ですよね! でも一応ルールなので、買うだけでなく使える準備をしなくてはなりません。 説明を聞くと、仲間がいたら寄り集まり、10mくらい先まで近づいてきたらスプレーすると。でも7秒しかもたないようで、要するに大きなお守りです。そして値段を聞くと$49.99・・・高いが、止むを得ません。 しかし後で参加者に言われたのは予想外の一言でした。 「なんだ本当に買ったのか!? それじゃ君は、地雷処理班と同じで、熊スプレー係に任命しよう。これでグリズリーにもスプレーできるな! ははは!」 |
翌日、18時には受付会場である自転車店「Speedway Cycles」に向かいます。入口に近づくと、主催者のKevin氏が声を掛けてくれました。まるでビル・ゲイツのような実業家スタイルです。
イギリスのときは「キュー」が楽しめましたが、こちらはさすがアメリカンスタイル。まさか、パーティ会場に突入することになろうとは・・・! ショップを貸しきって軽食が振舞われ、胸に名前の書いたシールを貼って談笑するのです。 韓国ブルベ1000kmの主催者Lotharさん、オランダから参加のBenさん、iPhone使いの元気なRさん、LELで僕のディスクを笑ってくれたスタッフの方など、英語が苦手な僕と話していただきました。 そんな中、キューシートやドロップバッグ用のタグなどを受け取ります。 そしてとりわけ重要だったのが、この自転車店で買い物ができるということです! 日本から持ってくる荷物を減らしたくてギリギリの持ち物でしたが、正直予想よりはるかに寒く、命の危険を感じていました。なにしろ週間天気はずっと雨の予報なのです。 そこに特売50%OFFコーナーがあり、もう迷わずに真冬用のレッグウォーマーを購入。これは今回の最大のラッキーポイントと言っても過言ではないでしょう。 |
宿泊地はアンカレジですが、スタート地点はVeldezという、東に200kmほど離れた場所です。
朝の7時にアラスカ鉄道駅に集合。このときしっかりと雨が降っています。真新しい雨具が水をはじいてくれますが、いつまでもつか心配です。 まもなく皆さん集まり、バイクは別途トレーラーに積み込まれ運送されます。Whittier駅までは優雅にアラスカ鉄道の旅。写真を撮ったり食堂でブラウニーを買ったりして楽しみます。 途中乗り換えて、今度は船旅です。待ち時間にKevinさんにドーナツとコーヒーをご馳走になりました。 船旅はこれまたとても優雅で、左右に流れ行く流氷を眺めながらゆっくりゆっくり進みます。 しかしですね、さすがに12時間も移動していると、みなさん暇そうにしていました。僕はキューシートを眺めつつ、すべてのPCの位置を推測する作業に忙しく、ちょうど良かったです。 21時過ぎにValdezに到着、ホテルに着く頃には皆さん疲れた表情になっていました。 |
翌日。スタートの日なんですが、スタートは18時なんですね。レイトチェックアウトを頼みましたが13時で締め出され、ブリーフィングまで暇です。というかValdezがあまりにも小さい町で、あっという間にすることがなくなりました。 待ち疲れという雰囲気が出ていましたが、このところずっと睡眠不足の日常だった僕にはちょうどよい事前睡眠を確保できました。 ブリーフィングを終え、18時。 大きなアラスカ州旗が振られました。いよいよ1200kmのスタートです。 スタートしてすぐに広い車道を走ります。道の脇には戦車が通ったようなくぼみがあるのですが、居眠り防止用の段差のようです。つっこむとすごいことになるので、避けていきます。しばらくすると民家があったのか、家族連れでアラスカ州旗を持って応援してくれる姿が見えました。ありがとう! そういえばパリブレストのときもこんな感じでした。 案の定降ってくる小雨にがっかりしながらも、峠を必死で登り進んでいきます。 PC1までとても快調でした。しかし地図上では街があるはずでしたが、見渡す限り何も無い。いえ、空き家があるところにトレーラーハウスが止まっている。そんな雰囲気です。 「すみませんが、トイレはどこですか?」 「トイレ? Everywhere! 大自然がトイレよ!」 これは予想外の反応です。了解して場を離れようとすると、ひとこと。 「紙は要らないの? ha ha ha !」 このタイミングがアメリカンジョークか! 思わず腹を抱えて笑ってしまいました。 夜も更けて、一時ひどかった雨もゆるやかになってきました。そして気がつくと、進行方向には北斗七星が高らかに上がっていました。まさに、アラスカ州国旗そのものです。気温が下がり吐く息が白いですが、購入したレッグウォーマーのおかげで寒さは耐えられないほどではありません。今回僕は、万一オーロラに遭遇してもいいように三脚と、手持ちの中ではもっともレンズの明るいコンデジを持ってきました。星空モードに設定して、夜空にむけてカメラをセットします。 しかし不思議な仕様で、シャッタースピードを30秒にすると「処理中」にも30秒待つ必要がありました。予備の充電池はありません。そしてその間に後続の車両が来ると、ライトでダメになってしまいます。どうやら、写真はそうそう撮れないであろうことがわかりました。 そもそも体力的に、時間に余裕があるわけではまったくありません。カメラをカバンに戻して先を急ぎます。 |
「"ヤマネコ"だ」 確かに、これはアラスカの野生生物で見かけた山猫です。このときは無邪気に、図鑑に載っていた動物をコンプリートできかるかなーと思ったのですが、それはすなわちクマにたくさん出会うということに他なりません。気を引きしめて先に向かいます。 そんな状況では、さすがに野宿はできません。そして気がつくと一人きりで夜明け前の林の中を走っているわけです。 こんなときに、パンクなんてしたら嫌だよなあ。ははは。 本当に、そう思ったときに。狙っているかのように前輪が重くなり、プシューガンガンガンとこう、走れなくなるわけです。ちくしょう! そんなとき、横の草むらでガサッと音がするわけですよ。しかも2回も。ちょっと全身から血の気が引きますが、そうも言ってられません。停止してパンク修理。予備チューブは2本あるので、とり急ぎ交換します。 後ろからやってきたランドヌールに「大丈夫?」と声をかけられ、安心しました。僕は一人で走ってるわけではないのです。 幸い何事もなくパンク修理が終了し、白んできた空を見ながら分岐の無い道をひた走ります。 コントロールに到着、スープとコーヒーをふるまっていただきます。アラスカの大地にはトレーラーハウスがとても似合いますね。ここにはトイレとカフェがありました。「このお菓子はおいしいですねぇ、初めて見ましたよ」 「ああ、それは新製品なんだ。持って行くかい?」 と、ジップロックを渡してくれました。 「なんて快適なんだ!」と感激して口にしてしまいます。 次の言葉で送り出してくれました。 「ここを過ぎると、しばらく道が悪いよ」 どういう意味だろうかと思っていたら、あらわれたのはオフロードでした。おかしいな、参加案内には「道は良いのでタイヤは700×25Cで充分」と書いてあったのに。でも道路工事は突然行われるものかもしれませんね。 それから小雨の降る中、延々5kmくらいは走ったでしょうか、オフロードの登り坂。 しかしそのような自然なので、ここで鹿を見ることができました。たまたま対向にクルマも来ていましたが、お互いに自然に鹿に道を譲りました。大家族の横断を待って進行します。 |
今回、チューブ2本を携帯し、瞬間パンクパッチ(糊がついていてすぐ貼れる)10枚くらいと、他に昔ながらの修理セットを持っていました。せっかく晴れているので、ここはひとつクラシカルな方法でやることにしました。つまりゴム糊をつけた修理です。 このメリットは永続的な修理が可能であること(瞬間パッチはかなり上手くやらないと、24時間以内に空気が抜けることが多い)、デメリットは修理時間がかかることです。あたりの美しい沼地を見ながら、20分くらいで修理完了しました。 このあたりから石油パイプラインが見え始め、たびたび変わり続ける天候とともに記憶に残ります。 どうもアラスカの国道には、「いい景色」標識があるようなのです。写真のマークがあり、next 1500feet と書いてあれば、そのあたりにシーニックポイントがあるわけです。この標識を見るたびに、撮影して止まることを意識してしまいますね。 |
とても急なオフロードに Welcome Big Wild Ride! と書かれていました。これが次のPCです。 中に入り、快適なレストランでコーヒーを飲み。出てくると・・・さっき修理したはずの後輪がへこんでいました。どうも、ゴム糊がうまくついていなかったようです。しかたないので剥がし、瞬間パッチを貼りました。しかしまた10分ほどのタイムロスがかさんでいきます。その様子を大会専属カメラマンに撮影され、苦笑するしかありません。 しばらくすると、360度完全に見渡せるような平原に、ひたすらにまっすぐ道が伸びる場所に出てきました。ふと見ると、向こうでカメラクルーがバイクから降りてこっちを見ています。 近づいて挨拶すると、 「むこうに嵐が発生してるみたいだね」 「そうなんですか。」 「あれはスゲェぞ(She's gorgeous!)」 「ha ha ha !!」 すごいなあ、話には聞いているけど本当にアメリカってこういう会話するんだ。あまりに面白くて、やっぱり腹を抱えて笑いました。 そしてそんなときは、見渡す限り一面の虹がかかっているのでした。(残念ながらとても色が薄くて写真はわかりにくいですが・・・) |
430kmほど走ったところで、Delta Junction という土地に着きました。ここは最初の「オーバーナイトコントロール」、つまり主催者が用意したPCのうち、寝ることができるポイントです。しかしオーバーナイトというわりにはコントロールのクローズは22:42なんですけど・・・これはきっと、夜間走ることを強制する=オーロラが見られるチャンスがある! ということにしておきましょう。 このとき僕はかなり疲れていましたが、スタッフの皆さんもまた疲れている様子でした。 シャワーの施設がありませんが、いたるところにウェットティッシュが用意されており、これでカラダを拭いて就寝です。フロアにマットがあって、そこに雑魚寝するわけです。疲れていたためか問題なく熟睡し、3時間後に目覚めました。 |
外は日没の時間です。とっぷり日が暮れたところで、ちょうどPCのクローズ時間でした。夜が更けていくのに、スタートするとは。でももっと重要なことがあって、パッチを貼った後輪の空気が、やはり抜けきっていたのです・・・。 幸いPCだったのでスタッフに手伝っていただき修理を試みます。 「パンクの原因はちゃんと追究したほうがいいよ。今回、リムテープがおかしくて6回もパンクしたヤツがいるんだ」 スタッフはそう言って、僕のチューブを水につけて調べてくれました。 「・・・おかしいな、どこもパンクしていないぞ」 そうなんですよ。でも空気が抜けてしまうということが、経験上瞬間修理パッチではよくある。使い方が悪いらしいのですが。仕方ないので、それはそれとしてチューブを入れ替えます。予想外でしたが、もう予備のチューブが無い。フェアバンクスのドロップバッグに予備を預けているので、それまでもってくれることを祈るしかありません。 |
パンクの恐怖を抱えつつ、それでも先を目指して走るしかありません。道は確かに悪くはないのですが、たまに大きな穴があいているので気をつけないと。 そしてまた夜間走行です。せっかくアラスカに来ているのだから、できればオーロラを見てみたいものです。実際、オーロラ予報によれば3日目と4日目には出現の可能性があるとのこと。ただ今夜は可能性は低い。まあそれ以前に雨が降ったり止んだりなんですけどね。 気温4℃で吐く息が白い。でもたまに、空に星が見えることもあるんです。その星の中が、なんだかぼやっと明るい気がする。せっかくなので写真を撮ってみます。まあ、でも半端に期待しても、どうせ雲なんですよね。と思って再生してみます。 液晶の中が、うっすら緑です。デジカメは見たものそのものではなく、期待された画像を出すように少しサチり気味なはず。え? いやでも? これは・・・やっぱりそうだ。オーロラだ! あまりのできごとにパンクの不安など忘れ、空を見上げます。進行方向の北斗七星に、周りの雑木林の向こうに、大きな月の真横に広がっていた緑色は輝きを増し、空全体に広がり始めました。 夢中で視界の開ける場所を探しながら、止まって撮影を繰り返します。撮影モードがいっぱいあって、マニュアルよりオートの方がいいのか、シーンモードがいいのか、やっぱりマニュアルがいいのか。何度も止まって繰り返しますが、オーロラは常に輝いているわけではありません。 やっと小高い丘に出たとき、夢中で三脚を設置して数回撮影できました。あまりに慌てていて自転車を写すことができませんでしたが、かろうじて自分とオーロラと月の組み合わせ。ひとつミッションを達成したような安堵感があります。 しかしながらマニュアルにセットしていたフォーカスがいつの間にかAFになっていて、ほとんどがピンボケになっていることをこのときはまだ気づいていません。 しばし消え行くオーロラを眺めます。本当に、ゆっくりと線がユラユラと延びていき、空にカーテンを作る。都市伝説じゃなかったんだなぁ。そんな感じでした。 その頃ちょうど一人ライダーが追いついてきました。 「何をしてるんだい?」 「見てくださいよ、オーロラですよ! ほら・・・あれ?」 もう、オーロラは終わっていました。まさしく一期一会、あっという間の出来事でした。 しかし忘れてはならないのですが、僕はブルベを走っている最中であり、完走するというのが最大にて最終の目的なのです。 |
すぐに到着した次のPCはMIDWAY LODGEというロッジで、本物の、深夜のアメリカンレストランです。メニューからハンバーガーセットを頼んで雰囲気を楽しみます。どうもここではレシートをもらう必要があって、それがPCチェックに相当するようです。 「時刻を書いてもらえますか」 「えーと、今はAM3:30ね。もっと早かったかしら?」 「いえいえいいんです、(クローズの)AM4:00より前に到着したことが重要なんです!」 何人かはここで仮眠を取って行くようですが、僕の足では先を急いだほうがよさそうです。単独で走り始めます。 ロッジを出て30分も走ったでしょうか、すぐ漆黒の闇と雑木林の中を走るのですが、どんどんアラスカの奥地に入っていることは間違いありません。なにしろ参加案内に「なるべく集団で走らないと危険」とあるのです。どんな動物が潜んでいることやら。こんなときパンクしたら本当に困るだろうなあ。ははは プシュー・・・ガンガンガン リム打ちの音が聞こえても、ああやっぱりな。と余裕があるのが普通ですが、ちょっと顔がひきつっていたかもしれません。もう予備のチューブはないのです。ですが、たまたま、途中に外灯を発見しました。なんと、数少ない民家があるのか! 一人原野でパンク修理するのと、民家の前で修理すのはどっちが安全か・・・どちらもリスクがあるけど・・・いずれにせよあまり選んでいる状況ではありません。停止して修理を開始します。 経験上、こんなに何回も同じタイヤでパンクするときには、たいてい小さなゴミが入ってしまっているか、タイヤに問題があるかのどちらかです。そして予備のタイヤを持っています。交換するしかなさそうです。 ▲タイヤ交換 修理中、集団が通過します。「おーい大丈夫かハハハ!」と、あまり停止する気もなく急いでいるので、平気と答えます。 "No! Help me!" と言うべきなのか、後で後悔するのかなあ。でもまだパッチはたくさん残っているもんね。 だが次の瞬間、さっき通過した男が叫んでいます。 「うわーー!!」 「ワンワンワン!!」 あれは、恐らく野犬でしょう・・・野犬・・・ 「くそっあっちへ行け! オラッ」 何らかの殴打音か、戦闘音が聞こえてきました。せいぜい200mほど先の出来事のはずです。 あれが本当に野犬で、しかも囲まれた場合。あのですね、ガチで死ぬ可能性があります。 やばいよやばいよ!! もしこっちに来られたら、逃げる手段すらない! ▲必死の修理 スペアチューブは無いのですが、修理に失敗したと思われるが原因が発見できないチューブなら残っています。この際、これでいい。修理時間を短縮したくて突っ込みます。新品のタイヤにこのチューブの組み合わせはかみこむことが多いので慎重に。ほらやっぱり20cmほどに渡って噛みそうになっている。必死で形を整えますが、なかなかうまくいかずに焦ります。その間にも数名が僕の前を走り去り、そしてすぐに叫び声を上げていました。やはり何かが居る。ただ、走り去れば大丈夫ということです。 ちょっとホッとして、空気を入れます。もしチューブを噛んでいたら大体80PSIまで入れたあたりで破裂します。幸い、110PSIまで入りました。よかった、修理完了だ! バーーーーーーーーーーーーーーーーン うわあああああああああああああああ |
全身から血の気が引いて口の中に嫌な味が広がる感じです。状況を整理すると: ・ここはアメリカ ・夜明け前に ・見知らぬ東洋人が ・民家の前で ・拳銃を発射したような音を立てている ヤバイ・・・ヤバイ、ヤバすぎる。ここでアメリカ映画だと、焦ってる主人公に絶妙のタイミングでライフルを構えた主人が出てきて何事かつぶやくんだ。いや、現実逃避している場合ではなく、できることはパンク修理それのみです。必死で残ったチューブの穴を探していると、後ろからゆっくりとピックアップトラックが近づいてきて、僕を照らして止まりました。 「ここで何をしているんだ?」 つづく ▲現実 本当に、ここでCMに入って欲しかった。しかし現実はノーウェイトで続いていきます。そして運がよかったことに、出てきたのはさっきPCでパンク修理を手伝ってくれたスタッフでした。 "Flat?" 心底安堵しました。 残りチューブがないこともありクラシカルなゴム糊で修理を再開しますが、気温4度のせいか、雨が降っていたためか、なかなかゴム糊が乾かず、くっついてくれません。 そのうち、民家から人が出てきて車に乗ってどこかへ走っていきました。しかし未明に外出する用事が普通にあるわけもなく、恐らく僕が起こしてしまったのかもしれません・・・。ここでスタッフがいなかったら、どんな事態になっていたでしょう。 結局糊はつきませんでした。スタッフが気をきかせてチューブをクルマから取り出そうとしてくれましたが、さすがにこれを受け取ってしまうと、ブルベの基本ルールに抵触している気がしました。緊急パッチを取り出して貼り、直ったと告げます。 すでに空が白んできて、さっきまで苦労していたのが嘘のように辺りが明るくなってきました。そして時計を見ると、まったく嘘のように1時間が経過していました。 |
幸いなことに、野犬は襲ってきませんでした。しかし残り時間が気になって仕方ありません。もちろんまだ余裕はあるのですが、停止した時間は累積して結局睡眠時間を圧迫するのです。 それより心配なのはパンクです。予備チューブはfairbanksに1本ありますが、このペースでパンクするならば帰りは絶望的です。自転車屋さんを探して、タイヤを前後とも交換すること。これが現在の新しいミッションです。 こんなこともあろうかと、僕は防水・耐衝撃性のあるスマートフォンを導入し、WordファイルやPDFファイルの参考資料を大量に保存していたのです! しかしまさか、役立つとは。明け方の空を見ながらスマートフォンを眺め、少なくとも2件は店があることを確認しました。残る問題は開店しているか、在庫があるかです。 ▲それだけではなかった しばらく快調に進むと朝日がきれいに差し込んできました。ちょうどそこで「写真、これより2マイル」という看板を発見。おお、もうすぐビューポイントか。楽しみです。でもその上に「駐停車禁止」とも書かれています。ふむ、よくわからないが停止してはいけないのか。走り続けよう。 もし僕がブルベの2日目でなければもっと冷静に英語を読めたことでしょう。次の看板を見て誤解に気づきます。 NO 下から読んだがためにか、一番上の NO の行を見落としていたのです。つまり そうだよどう考えてもこれは警備の厳しい空港、すなわちアメリカ軍の基地じゃないか。頼むぞーここだけば無事に止まらずに通過させてくれよ!! プシュー・・・・ガンガンガン おいいいいいいいいいいいい!! 舗装はほぼ完璧。それなのになぜこんなにパンクするのか。しかも今度は前輪です。停止したくないけど、どうしようもない。全力で前輪を外し、パンク修理を行います。緊急パッチを貼る以外の選択肢はありません。 頼むぞー、兵士に拘束されたりしませんように!! 冗談であればよいのですが、海外を自転車で放浪している方には結構ある話だとも聞いているので気が気ではありません。なんとか、急いでその場を立ち去ることに成功しました。 |
ここまで本当にほとんど一直線でしたが、fairbanksに近づくにつれて道幅も広がり、分岐も増えてきました。そしてこれはどう見ても高速道路を走っています。なにしろ名前はハイウェイです。クルマに気をつけながら走ります。 途中、コンビニエンスストアを発見して食料を補給したりしつつ、いよいよあと10km程度で次のPCです! プシュー・・・・ ▲8回目のパンク 高速道路の路肩を走っているとき、またパンクしました。今すでに前後のタイヤは緊急パッチが貼られており、とてつもなく信頼性が低く感じています。 しかしまあ、修理するしかありません。緊急パッチを貼って・・・いやしかし、さすがにもうそろそろパッチも尽きるのではないか? 見るともうあと4枚くらいしかありません。 それだけではなく、たかだか10分程度の時間であっても、こんなに重なるとバカにならず、次のPCクローズタイムが心配です。どうやら判ってきましたが、晴れていて路面の舗装もよいのにパンクをするのは、細かい破片が路肩に散乱しているためのようです。 残り10kmで、クローズまで1.5時間。 ところがここでキューシートは「左折」と告げています。高速道路をOVERSIZEと書かれたトラックやパトカーが走るなか、意を決してトの字を直進します。普通、トの字で左折(L)と書かれたら、直進しますよね? しかし進んですぐ思い出したのですが、これは「右折することによって結果として陸橋を渡って左折する」ところでした。あっと思ったらもう遅い。ナビを見ると少なくとも5kmくらいは走らないと元に戻れないことが判り、泣きそうになりました。かといって路肩を逆走してパトカーに咎められるのも最悪です。仕方なく、急いで走り続けることにしました。 ▲間に合うか! 走り続けてなんとか元の道に復帰します。あと30分で4kmか。いやぁ、なんとかなった。あぶなかったなー と思ったら、スー・・・プシュー・・・ガンガンガン またかよ! ▲9回目のパンク なんだかもう、疲れました。 そこでもう一つの選択肢を検討しました。つまり、パンクは修理せず、そのままで走り続けるというものです。トータルで見てどちらが時間的に有利が非常に微妙なところですが、完全にフラットになってから走らねばならない距離は2kmちょっとでしょうか。なんとかスポークにダメージを与えないよう気を使いつつ走り、次のPCである大型スーパーに到着します。 |
走行距離596km、フェアバンクスのスーパーマーケット"SafeWay"に到着です。結果から見ると、クローズの52分前にレシートをもらうことができたようです。僕にとっては幸いなことに、ほぼ600km地点ですから、これから制限時間が追ってくるスピードがグッと下がります。(15km/hが11km/hくらいになる) つまり次のPCのクローズまでかなり時間があります。 パンクしたまま走ってくる僕をみたスタッフが声をかけてくれました。 「もう9回もパンクしたんですよ。自転車屋でタイヤを交換するんです。」 「自転車屋に心当たりはあるのかい?」 「ええ、名前はわかるからタクシーで行こうかと。ルール上問題ないですよね?」 「よし、俺のクルマで行こう!」 ええっ!? これは心底驚きました。確かルール上PCでの手助けはOKだけど、いいのかな。しかしスタッフの方がこう言ってくれているなら、OKでしょう。ご好意に甘えることにしました。 スマートフォンの画面にあるバイクショップ一覧を見せます。しかし残念ながらその資料に電話番号は書かれていませんでした。 「よし、タクシードライバーに聞いてみよう」 そう言うと彼は、停まっていたタクシーに声をかけ、道を聞いていました。 情報漏えいとか利益供与とかコンプライアンスとか。そんな言葉にしばられ、自分の業界では正当な対価を受け取らずに質問に回答することは禁じられています。 そんなこと気にするなんてナンセンスさ———そう言われたかのように快くタクシードライバーは道を教えてくれました。 「ありがとうございます!」 「どういたしまして」 そう言って肩をすくめる運転手のカッコよさと言ったら・・・いつの間に僕はアメリカ映画の中に入り込んでしまったんだろう? ▲開店時間 「俺の名はマイクだ」 そう言ってスタッフの彼は握手を求めてきました。そういえば彼はスタート地点で巨大なアラスカ国旗を振っていた人です。しかしその穏やかな外見と、年齢と、帽子。僕は心の中で「おやじさん」と呼ぶことにしました。(SNATCHERというゲームの登場人物、ここはHIDEOワールドでもあったようです) とりあえず近くのバイクショップである、ビーバースポーツに向かいます。 掃除をしている人に聞くと、開店時間は10:00AMのようです。あと50分近くあります。どうする? と聞かれますが、他のショップの正確な場所と開店時間がわかりません。あいにくauのスマホでは海外でネットサーフィンすると破産しかねないほど高額なローミング料金がかかるのです。 そのとき、業務員用の駐車場に誰かがやってきました。 「あれは従業員かな。ちょっと先に入れるかどうか、頼んでみよう。」 近づいていくと、店からあきらかに店主と思しき人物が出てきました。この風格はまさにドラマのキーマンに違いありません。 マイク「この男はValdezからここまできて、Anchorageに行く大会の途中だがタイヤが必要なんだ。急いでいるんだが、何とか中を見せてもらえないか?」 店主「事情はわかった。だが彼が誰であろうとも、開店時間は守ってもらおう。それがたとえ大統領であってもな!」 もちろん最後の部分は僕の脳内トランスレータが勝手に追加したものですが、そのあまりのアメリカ映画ぶりに思わずかっけぇー! と勝手に思っていました。 マイクは残念そうに、どうする? と。タイヤを交換せずこのまま走り続けるという選択肢も無くはないのですが、ここまできたらここで待つのが正解でしょう。 すぐ近くにあったパンの出店で朝食タイムにしました。 |
ここにきてしかし、700Cのタイヤがある保証はありません。少し心配でしたが、中には様々なタイヤが天井からつるされていて、心配はなさそうです。 「耐久性があるタイヤだとどれがオススメですか?」 「そうだな、この700x27Cがオススメだ。」 「700x・・・27C?」 マイクと一緒に、twenty-sevenと合唱してしまいました。23C、25Cの次は28Cが標準と思っていて、27Cとは聞いたことがなかったためです。でもよく考えてみるとパリ-ルーべは27Cなんですよね。 またよく聞いてみると、この界隈では700x28Cが標準であり、大量在庫されていました。アラスカではそのくらいで走るのが良いのでしょう。日本だとほぼ皆さん23Cですが、地域によってもタイヤ選択は色々あるんですね。 ただ、僕のフレームには28Cだと干渉して乗れない危険があるので25Cを探してもらいます。すると・・・アンチフラットタイヤは1本のみですが、何とか同じカラーのタイヤを発見してもらえました。 マイクと一緒にタイヤをセットし、PCに復帰します。トイレから出てきたら、なんとマイクは汚れたフレームをキレイに拭いてくれているではありませんか。 「ありがとうマイクさん、こんなによくしてもらって」 「なあに、好きでやっているのさ。それより頑張れ!」 |
新しいタイヤはさすがに重いですが、荷物も元々重いのであまり走行感に違いはありません。むしろ25C対応のチューブがかなりかさばって大変です。ただ、さすがに23Cよりはパンクしないだろうと信じて進みます。 町を出るとすぐアップダウンがはじまります。そして天気は晴れてきました。あんまり暖かいので気温を見ると14℃であり、「ああこれは暑いはずだ・・・」とつぶやいて、ふと気づく。日本では夜中でも30℃だったっけ・・・帰ったらまた暑さに慣れるのが大変そうです。 予想外に色々と時間がかかってしまいましたが、何とか最後尾のライダーに追いつきました。ちょうどそのとき、横に建物が。30kmくらい何もないところへ建物があり、しかもキューシートに載ってるので、ちょっと寄っていくことに。 いわゆるパブなのか、みやげ物屋さんなのか。たぶん直訳したらヤバそうな単語が並ぶそんな店に立ち寄ってみました。そこにBWR参加者がいます。声をかけてみますが、僕の英語だと特にネイティヴの人には通じにくい。 「ここはどんな店なんですか?」 「ああ、そのなんだ。君に俺の言葉が通じているかわからないが・・・いわゆる、ヤバい店だな」 その言葉をさえぎり中に入ろうとすると、 「おい、本当に行くのか? 止めはしないけど・・・いや本当にいくのか?」 いったい何なんだろう。そこへ中から女将が声をかけます。 「あらぁ、道路工事屋さんじゃないの? ちょっと、逃げないでよぅ、工事屋さーん♪」 反射素材をたくさん着ているランドナーに向けた言葉でしょう。しかし完全にからかわれています。 僕はトイレをお借りし、コーヒーを一杯。ふと床に佇む犬を発見。 「かわいいですね、なんて名前ですか?」 「パギーっていうのよ」パグ犬だけに・・・。 このあたりの冬の暮らしや、パギーとの暮らしについて、コーヒーを飲み終わるまでお話しました。 「次の街までは20kmよ」 なるほど、迂回路がまったくないので、この表現はとてつもなく正しいんだなと思いますね。 |
■Healy - 2nd Over night control 夜が近づき、また天気が悪くなってきました。降らないでほしいなあと思っていると雨が降り出し、ぬれたまま走ります。寝る直前にこういう状況は正直うれしくありません。 日が暮れたところでようやく教会にたどり着きました。 「参ったな、パンクのせいで全然時間が足りないや」 「何を言うのさ、まだ3時間もある。食事をしてゆっくり寝て、充分に時間はあるさ」 Kevinが明るい言葉をかけてくれました。雨にぬれたせいで両足もかなり痛くなっていましたが、ピザとスープに舌鼓を打ったらさっさと眠ることにしました。 走り終わった直後は気づかないのですが、結構気温は低いのです。たぶん1時間もしないうちに、ガタガタ震えて目が覚めたような記憶があります。が、誰かが寝袋をかけてくれたようで、クローズタイムの直前には暖かく目覚めることができました。ありがとう・・・ただ、この寝袋は僕の持ち物ではないんですけど・・・。 ▲オーロラ撮影の時間ですが クローズはAM1:08です。教会を出て、しばらく坂を登ります。オーロラ予報では今日と明日がチャンスであり、しかも緯度が高いのは今日くらいのものです。ですが、天気は小雨。まったく空は開けていませんでした。しばらく粘りましたが、諦めて先に進みます。 この日はPCでひげを剃っていたら激写されてしまい、妙にウケていました。 「一番のキレイ好きは君に決まりだな!」 道の横には延々といねむり防止用のデコボコがあるのですが、その横の路肩はフラット。そのはずだったのに、このあたりから路肩にも雨水を流すためと思しき溝が出てきました。どこを走ってもがたがた・・・体へのダメージがひどいので車道に出ると、OVERSIZEのトラックが100km/hくらいで走り去る。恐ろしいので路肩しか走れないのでした。 ふとGPSを見ると今日の最終目的地が見えました。あと直線距離で15kmか。しかし道のりを見ると残り50kmでした。どういうこと? それは川を渡る手段がないので、大きく迂回するのです。 針葉樹を眺めつつ、アラスカ鉄道のかわいらしい車両を見つけ、気がつくと最後のOver night Controlに到着です。 |
■Talkeetna - 3rd Over night control 「リストから二つ選んで」 と言われ、名前のわからない、しかしとてもおいしい夕食を採ります。 ここで後ろに "Alaska State Fair" のポスターを発見しました。観覧車が描かれています。 アンカレジのホテルのエレベータの中に貼ってあったポスターで見たのですが、アラスカ州フェアというのが年に1度あって、しかもそのイベントが、明日から始まるのです。 「あのー、このイベントなんですが。もしかして観覧車があるんですか?」 「そうよ。」 「僕が行っても乗れますかね?」 「もちろん!お金を払えば誰でも乗れるわ」 本当ですか。それはもう行かなくては! 帰り道、15kmほど寄り道すれば確か会場を見られるのですが、残念ながら今回その時間的余裕はなさそうです。順調にゴールすれば帰国前に1日時間があるので、行く方法について大会のあとで教えてもらう約束をしました。 このコントロールでは、ついに普通のベッドで寝ることが出来ます。4人の相部屋です。起こしてもらう時間を指定するのですが、相部屋の二人は24時まで寝る予定のようです。僕はもう少し早く出たかったのですが、せっかくなので彼等と同じ時間まで寝ることにしました。 |
シャワーもあり、静かで、暖かいベッド。快適な目覚めですが起床時間が24時というのは、やはりおかしい気もします。 タルキートナはオーロラが見られる最後のチャンス。そして外に出ると・・・小雨ですよね、やっぱり。 ということで撮影は断念。オーロラ予報とは全然離れたときに写せた最初の一回が、やはり奇跡的なチャンスだったようです。 暗闇の中に浮かび上がる「Anchorage」の標識に心を奮い立たせ、道の白線を見ながら進みます。この白線は、ゴールに続くまさしく一本道に違いありません。 ▲最後のPC 最後のPCはウォルマートでした。マクドナルドで朝食セットを楽しみながらゆったりし、ゴールを目指して走り出します。 するとマイクがいました。 「曲がり角まで誘導するよ」 えっ? それはルール違反なのではないか。そうでもないか。いずれにせよ絶対に迷わないために、事前に地図とにらめっこで必死にGPSにデータを入れているから同じといえば同じでしょう。スタッフの好意は受けましょう! ということで、いくつかの曲がるポイントにはマイクが待機していました。 「ここからは道にペイントがあるから、それにしたがって走ればいいよ。2回峠を越えれば、あとはずっと下りだ。」 「ありがとう、マイク」 「グッドラック!」 ▲カムバックサーモン 確かにそこから後は路面に BWR とのペイントが続きます。ほとんど高速道路の路肩を走り、その横の歩道を走り、市街地を抜け・・・気がつくと見覚えのある土地です。あれはアンカレジ! ひたすらに長く続く電車に開かない踏み切りで渋滞が発生している横を抜け、川を渡ると・・・ゴールは目前でした。 やった! ゴールだ! そう僕は最後のライダーでした。最後時間があるかと思ったけれど、実はもう15分しか余裕がなかった。ギリギリです。 ※実測距離に基づき制限時間が迫ってきますが、最後のPCだけは1200km地点であるとの仮定でクローズタイムが決まります。キューシート上では1215kmくらい走るので、実際は1時間ほど遅れても完走認定がもらえる仕組みのようです。 |
バンケットの会場で僕は表彰されました。 「最終走者はツールドフランスでも注目されるんだが知ってるかい?」 「ランタン・ルージュですか」 「その通り!」 ということで、僕は鮭のぬいぐるみをもらいました。最後まで気がきいています! 2013年からは7月に隔年開催となる Big Wild Ride. 今度はPBPと重ならないときに実施されるようです。あなたもアラスカの大自然を感じてみませんか。 【データ】 走行距離 : 1226.9km |
翌日、アラスカ・ステート・フェアにはバスと電車が1日に1本出ていることを教えていただきました。 結局電車で向かい、ものすごいスピードの観覧車に乗ったりして楽しむことが出来ました。 最後の花火も感動的だし、行ってみる価値はありますよ。ただ、翌日のフライトまで時間がなくて、最終日の睡眠時間が4時間になってしまいました。 Report & Photo Hiroshi IMAIZUMI |
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